県内でもトップクラスの進学校で、勉強も部活も優秀。
そんなわけで入った弓道部。
例年を遥かに上回る新入部員の数。特に女子。
こりゃ嫌でも打たれ強くなるわ。
ただ、こんなことで一度入った弓道部をあっさり辞めるなんて自分を許せないわ。
こうなったら持ち前のド根性で生き延びてやろうじゃないの。
友人達がせっせと勉学に勤しむ中、大学進学や卒業してからやりたいことなんて考えたこともなかった私は、
それはもう完全な弓道バカになりました。
その頃の私のモットーは「イチに弓道 ニに弓道 サンシに恋愛 ゴに弓道(勉強は?)」。
練習もそうですが、鬼先輩方からの説教の嵐にも歯を食いしばり、
いやもう、これはレギュラー入りしない方がどうかしてるだろと自分で自覚するくらいに努力しました。
その甲斐あって、同期部員の中では常にトップを走り、
もう何にも分からない。
もう終わりかなって思いました。少し。
結構頑張ったし。
でも弓道が好きな気持ちは消えていなかったし、
ふざけんなや。誰よりも努力してんだよ。
選ばれた奴ら見てろよマジで!!!
心の糸が切れ、奮い立ちました。
誰に嫌われたって構わない。弓道の神様にだけ好かれればそれでいい。
次の試合で選手に選ばれ、全国へ行くのは絶対に私。
そう心に誓い、ゼロからやり直す覚悟で練習を始めました。
休みの日でもたった一人道場に通い弓を引き、その矢の本数は他の誰にも負けませんでした。
次の試合が来るその日まで、狂ったように闘志を燃やし続けました。
そして迎えた試合の日。
どん底から這い上がり、選手に選ばれた私の、ここ数ヶ月間の燃えたぎるような心は、
意図せず心が無となっていて、緊張していたのかどうかも記憶にありません。
ただ私の放った全ての矢は、寸分の狂いもなくまっすぐに的へと吸い込まれていきました。
結果は、団体、個人ともに優勝。
努力は必ず報われる。頑張った人には神様って絶対にいる。
そのことを身をもって知った瞬間でした。
勝とうなんて考えてもいなかったのに。
ただ本番、楽しんで弓を引いただけだったのに。
でも、今だからはっきりと分かることがあります。
その結果が受け取れたのは、不思議なことでも何でもなくて、
全試合出場者の中で最も努力をした者が、それに値する結果を受け取っただけのこと。
人生って、シンプル。
